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【温故新地】vol.02 クラブママプライド(後編)


 

「温故」から「新地」へ

山名和枝さんの歩んでこられた歴史をお伺いした前編・中編。何事にも好奇心を持ち、誠意をもって仕事に望むというレジェンドとしての生き方は、私たちが学ばなければならない「温故」でした。

続いては、私たちの生活にどう取り入れるか、北新地のまちへの想いなどをお伺いした「新地」をお送りいたします。


 

●仕事と子育ての両立

 仕事をする人間というものは子育てはできない、自分は母親としては失格だとおっしゃられる山名和枝さん。子育ては周りの人に助けていただきながら、お仕事を一生懸命にこなす毎日。しかし、パーティにひっきりなしに呼ばれていた時代にも、幼稚園の送り迎えに走り回られていたそうです。


山名和枝さん

「子育ては周りの人に本当に助けてもらったので、とても恵まれていると思います。女というものは子どもがいるのといないのでは働く根性が違ってきます。子どもがいるってことは勤めることに対して真面目になりますし、生きていく上で心丈夫になりますね。」


愛情が感じられる母のお顔


山名和枝さんのご子息であり、堂島・北新地プライドの会のメンバーでもある上代直紀さんにも登壇いただき、プライベートの山名和枝さんについてお話しいただきました。



上代直紀さん

「母親なんてしたことない、と言っていましたが、僕も育ててもらった記憶がない。帰ってけえへんような父親のようで、本当に働いている姿しか見たことがないです。伯父、伯母に育てられ、小さい頃はあんまり母になついてなかったけど、だんだんと母親の愛情を理解するようになったので、グレずに今ここにいるんやと思います。

 小学校の頃に母から水商売の社会的地位の低さについて説明されては、いつも謝られていました。でも、人にバカにされない、人に後ろ指さされないような生き方しようぜ、と言ってもらっていたことが自分の生きる糧になっています。

 母は、生まれ変わってもこの仕事をしたいと言うてるところがすごい。育ててもらったことはないと言いつつも、恩しかないです。」


家族でスキーに行っても部屋から出ないで年賀状を書いていた山名和枝さんの貴重な1枚

「こどもの時に思い出に残っている言葉を最後に。『モノや情を借りたら、倍返ししなさい。』と昔から言われています。なかなか難しいですけどね。」





●参加者からの質問


Q印象に残っているエピソードは?

 お客様のお叱りが神様の言葉に聞こえるくらい衝撃的だったことがあります。20年前に、年齢のことも考えてお店も少し小さくし、老後はゆっくり営業していこうと思っていたある日。お客様から「ゆっくりしたかったら家でゆっくりせんかいな!あんたがゆっくりしてるから、見てみい、この従業員のあほ面!」とカミナリを落とされました。なんて言いにくいことを言わせてしまったんだと衝撃が走りました。二度とお客様にそんなことを言わせないようにしようと、今もお店のみんなで頑張っております。


Qホステス心得帖をつくるきっかけや想いは?

 ホステス心得帖の前書きだけは書いたけども、中身は私が書いたのではありません。

ホステス心得帖の中で一番共感できるところは、「美人は3度で飽きる」という言葉。美人は話す前にハードルが高く、話しているうちに頭が悪いなと思われるけれども、あまり美人でない子は話す前からハードルが低く、話しているうちに思いやりがあったり、心づかいがあることを知ってもらえて、お客さんにも長く愛されるような気がします。


会場の様子

Q怒ってしまうとすぐに辞めてしまう女の子が多くなった時代に、指導の仕方などありますか?

 人を育てるという言葉がありますが、人は育たないと思います。人には持って生まれたものがあるので、何回言っても分からない人は分からない。前へ向かおうと思う気持ちがある子は聞く姿勢が違います。うちのお店の子はいい子が揃っているというのなら、もともとの性格がいい子が集まっているのだと思います。


Qいつもお綺麗にされていますが、お手入れなど美しさを保つ秘訣はありますか?

 これも持って生まれたもんと違いますか。デヴィ夫人はとても美しいですけど、あの方の美しさも心の中から出ているものだと思います。整形してもあんなにきれいになりませんよ。意地の悪い人、心の悪い人だったら整形しても悪い顔になってるんと違います?顔はその人の履歴だと言いますしね。

 私は心がけから変えるべきだと思います。自分のことを褒めているわけじゃないですけど、助けていただいたり大事にしてくださった方にはいつも感謝の気持ちを持っていますし、なにかご恩返しをしたいと思っています。


Q今の北新地の若いママはどう映っていますか?好意的な視点と、意地悪な視点とお聞かせください。

 自分のことを考える暇もなく、一生懸命やっておられる姿が見えます。もしもみなさんが、挨拶ないな、とかマナー悪いな、とか思われるようなことがあったら、まだそこまでできる余裕がないのではないでしょうか。

 良いお店をつくると、良いお客様が来られます。お客様が来られないと愚痴を言うようじゃ努力が足りないと思います。お客様も変わっていきますけども、色んな評判を聞いて来てくださる新しい方もいらっしゃいますし、やっぱりここがええわと戻ってきてくださる方もいらっしゃいます。難しい仕事だと思いますけれど、人を大事にするというのは一番大事なことだと思います。

 私の独立のきっかけも巡り合わせですし、一生懸命やっているうちに巡り合わせがくるんですね。今日のきっかけを大事に、これからもより一層お客様を大事にして頑張ってくださいね。



●おわりに

山名和枝さん

一流の方でも一見よれっとした服装で疲れた顔のお客様もいらっしゃいますし、パッと見だけで判断したらあかんなと思います。けれども、どれだけ高くてもやはりTシャツはTシャツ。上着を羽織る教育だけでもしてほしいですね。あとは客引きやお店の関係で道に立っている男性がタバコをポイ捨てしていると。しっかりとした男性経営者の方がいらっしゃるのですから、そこはきちんと教育していっていただけるといいですね。


ゲストの山名和枝さんと温故新地の主催メンバー

 

「人は見た目で判断してはいけない。」と教えられますが、北新地は特別なまち。TPOに合わせて自分を演出することも大切だと教えていただきました。服装や外見だけでなく、北新地というまちで働くことの意味を分かったうえで働くスタイルこそが、“北新地プライド”につながるのではないでしょうか。

 山名和枝さん、ありがとうございました。

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